Cline with Amazon Bedrock と Blender MCP で 3D モデルを生成してみた !

2025-06-03
デベロッパーのためのクラウド活用方法

Author : Sheng Hsia Leng

ゲームなみなさんこんにちは ! Game Solutions Architect の Leng です。

2024 年 11 月に Anthropic が発表した MCP (Model Context Protocol) は 2025 年 6 月現在、多くのサービスで利用されています。MCP により、AI エージェントは様々なツールやサービスと標準化された方法で接続できるようになり、その活用範囲が急速に広がっています。MCP の利用は単なるデータソースへのアクセスだけに留まらず、3D モデル作成ツールやゲーム開発エンジンなど、クリエイティブな領域のツールとの連携も始まっています。今後も MCP 対応サービスの拡大が予想され、AI エージェントを活用した開発の可能性がさらに広がっていくと考えられます。

このクラウドレシピ (ハンズオン記事) を無料でお試しいただけます »

毎月提供されるクラウドレシピのアップデート情報とともに、クレジットコードを受け取ることができます。 


1. MCP (Model Context Protocol) とは

MCP とは Anthropic が策定した AI モデルと様々なデータソースやツールを「つなぐ通訳」のような役割を果たすオープンプロトコルです。例えば、AI アシスタントアプリがユーザーのカレンダー、メール、ファイル、データベースなど、様々なツールやデータにアクセスする際、専用の SDK などを利用して各ツールごとに異なる「言語」で会話する必要がありました。MCP は、これらすべての「言語」を一つの共通言語に統一し、AI アシスタントが様々なツールとコミュニケーションを取れるようにします。

つまり、開発者はもはや各サービスごとに独自の連携方法を実装する必要がなく、MCP という「共通言語」を使うだけで、様々なツールやデータソースと AI を簡単につなげられるようになったということです。これにより、開発者の効率が向上し、より多くの可能性が開かれています。AWS も AWS MCP Servers を提供しており、AWS ドキュメントの参照やコスト最適化など、AWS 環境での開発を総合的にサポートできるようになっています。


2. Blender MCP を利用して AI エージェントから 3D モデルを生成する

Blender は 3D コンピュータグラフィックスの制作やアニメーションに特化したオープンソースの 3DCG ソフトウェアです。Blender MCP は、Blender と AI エージェントを接続するプラグインで、MCP を使用して AI による直接的な Blender 操作を可能にします。これにより、AI エージェントとの対話形式で 3D モデルの作成や編集など、Blender の複雑な操作を AI の支援を受けながら行うことができます。

本記事では、Anthropic の Claude 3.7 Sonnet を、オープンソースの AI エージェントである Cline を通じて利用する方法を解説します。Claude 3.7 Sonnet は、コーディングやステップバイステップの詳細な思考プロセスに優れた性能を発揮し、Amazon Bedrock を通じて利用可能です。Amazon Bedrock を利用することで、エンタープライズレベルのセキュリティ、効率的なガバナンス、透明性のコスト管理、一貫した運用管理が実現できます。Amazon Bedrock、Cline そして Blender MCP を組み合わせることで、3D モデリングの生産性向上と開発の効率化が期待できます。


3. Amazon Bedrock の利用開始方法

3-1. Amazon Bedrock のモデルアクセス設定

2025 年 6 月現在、本章の作業はオレゴンリージョン (us-west-2) で行います。Bedrock 上の Anthropic Claude 3.7 Sonnet が利用可能なリージョンは今後追加される可能性もありますので、詳しくは こちらのドキュメント をご覧ください。

Amazon Bedrock を利用を開始するには、利用するモデルのアクセス設定が必要です。マネジメントコンソールで Amazon Bedrock のページに遷移し、左側のペインで「モデルアクセス」を選択します。それから、右上の「モデルアクセスを変更」をクリックしてください。ここで、利用したいモデルにアクセスできるようにします。今回は「Anthropic Claude 3.7 Sonnet」を利用します。

画像をクリックすると拡大します

3-2. IAM ユーザーを作成して Cline へ登録する

まず Amazon Bedrock 上の基盤モデルに対してモデルを呼び出せるようにポリシーをアタッチします。「ポリシーを直接アタッチする」を選択し、「ポリシーの作成」をクリック (別タブが開きます) します。

画像をクリックすると拡大します

画像をクリックすると拡大します

ポリシーエディタの画面で以下のポリシーを貼り付けます。Amazon Bedrock 上の基盤モデルに対して、モデルを呼び出し、ストリーミングでレスポンスを受け取ることを許可するというポリシーになります。この例では「ClineInvokeModelWithResponseStream」としていますが、任意のポリシー名で問題ありません。

{
    "Version": "2012-10-17",
    "Statement": [
        {
            "Sid": "AllowBedrockModelStreamingAccess",
            "Effect": "Allow",
            "Action": "bedrock:InvokeModelWithResponseStream",
            "Resource": [
                "arn:aws:bedrock:*::foundation-model/*",
                "arn:aws:bedrock:*:*:inference-profile/*"
            ]
        }
    ]
}

IAM ユーザーの作成が完了しましたら IAM ユーザーのアクセスキーとシークレットアクセスキーを取得します。該当する IAM ユーザーを選択し、「セキュリティ認証情報」タブに移動して、新しいアクセスキーを作成します。

画像をクリックすると拡大します

作成されたアクセスキーとシークレットアクセスキーをコピーし、次の Cline の設定のステップで使います。アクセスキーの管理の詳細については、AWS アクセスキーを管理するためのベストプラクティス を参照してください。

画像をクリックすると拡大します


4. Cline with Bedrock の利用開始方法

VSCode に Cline をインストールします。API Provider は Amazon Bedrock を選択し、上のステップで取得したアクセスキーとシークレットキーを Cline に入力します。

画像をクリックすると拡大します


5. Blender MCP の利用開始方法

まだ Blender をインストールしていない場合は、ダウンロードしてインストールします。Blender MCP を使用するためには、Blender バージョン3.0 以上が必要条件となります。

こちらの Blender MCP の GitHub リポジトリ をローカルにクローンします。

git clone https://github.com/ahujasid/blender-mcp

addon.py ファイルを見つけ、上記 GitHub の手順に従って Blender にファイルをインポートします。 手順として、Blender を起動したら、ヘッダーの「Edit (編集)」タブから「Preferences (プリファレンス)」→「Add-ons (アドオン)」を開きます。右上の「Install (インストール)」を選択し、ローカルの addon.py ファイルを選択します。

Blender 画面を引用
(画像をクリックすると拡大します)

インストールした後に右上の検索バーで「Blender MCP」で検索し、「Interface: Blender MCP」の横にあるチェックボックスにチェックを入れます。

Blender 画面を引用
(画像をクリックすると拡大します)

Blender 内で「N」キーを押すと、Blender MCP が表示されます。Poly Haven のアセットを使用したい場合はオプションにチェックを入れて、MCP サーバーに接続します。

(Blender 画面を引用)
画像をクリックすると拡大します


6. Cline with Bedrock で Blender MCP を操作してみる

最後のセットアップステップとして、Cline に依頼して、cline_mcp_settings.json ファイルを探し、以下の内容を貼り付ける必要があります。BLENDER_PATH や args の設定は、お使いの Blender のインストール場所に合わせて変更してください。なお、この例では Mac での操作を想定しています。Cline の「Auto-approve」を活用することで、Cline が MCP コマンドをこの配列に自動的に追加します。

* 設定後、「Auto-approve」の 「Use MCP servers」のみ有効にしておくと、この後の生成プロセスが便利になります。

Cline に入力するプロンプト例 :

cline_mcp_settings.json ファイルを探し、以下の内容をコピーしてください。BLENDER_PATH および args が、お使いの Blender の既定のパスと異なる場合は変更してください。

cline_mcp_settings.json

{
  "mcpServers": {
    "blender": {
      "command": "node",
      "args": [
        "/Users/<user>/Documents/Cline/MCP/blender-server/build/index.js"
      ],
      "env": {
        "BLENDER_PATH": "/Applications/Blender.app/Contents/MacOS/Blender"
      },
      "disabled": false,
      "autoApprove": [
        "execute_operation"
      ]
    },
    "github.com/ahujasid/blender-mcp": {
      "command": "uvx",
      "args": [
        "blender-mcp"
      ],
      "env": {},
      "disabled": false,
      "autoApprove": [
        "get_polyhaven_status",
        "get_hyper3d_status",
        "execute_blender_code",
        "create_object",
        "set_material",
        "modify_object",
        "delete_object",
        "set_texture",
        "get_scene_info",
        "search_polyhaven_assets",
        "download_polyhaven_asset"
      ]
    }
  }
}

6-1. テキストを入力プロンプトとして 3D モデルを生成する

まずはテキストを入力プロンプトとしてかわいい猫のモデルを生成してみます。下記の例のプロンプトを Cline のチャット画面に入力します。

Blender MCP に接続し、新規の状態から開始してください。かわいいにゃんこを Blender 内で再現してください。

Cline 上の Claude 3.7 Sonnet のシンキングプロセスのログを解析してみると、まず最初に Blender MCP が正しく接続され使用可能な状態になっているかを確認する必要があります。この確認には get_scene_info ツールを使用します。このツールは、Blender の現在のシーン情報を取得し、アクティブなオブジェクト、カメラの位置、ライティング設定、マテリアルの状態など、現在の 3D 環境の詳細な情報を返します。この情報を基に、これから行う 3D モデリング作業の初期状態を確認できます。

Cline 上での Blender プログラミングでは、主に 3 つの重要なライブラリが使用されます。Blender の核となる Blender Python API は、3D モデリング、マテリアル設定、アニメーション制御などの Blender の全機能にアクセスを提供します。次に、Python 標準ライブラリの math は、三角関数や角度変換などの基本的な数学計算機能を提供し、3D モデリングの数値計算に使用されます。最後に、Blender 専用の数学計算ライブラリである mathutils は、3D 空間でのベクトル演算や行列計算を可能にし、特に Vector クラスは 3D 空間での座標計算や方向制御に重要な役割を果たします。これらのライブラリを組み合わせることで、効率的な 3D モデリングの自動化が実現可能となります。

Great! I've successfully created a new empty scene called "CuteCatScene". Now I'll create a cute cat model. For a cute cat, I'll need to:

1. Create the main body (sphere/ellipsoid)
2. Add a head (sphere)
3. Add ears (triangular shapes)
4. Add a tail (curved cylinder)
5. Add legs (cylinders)
6. Add facial features (eyes, nose, mouth)
7. Add fur texture or material

Let's start by creating the basic body structure of the cat.

Now I'll create a cute cat model. Let's start with the basic body structure.

Cline wants to use a tool on the `Blender` MCP server:

execute_blender_code

Execute arbitrary Python code in Blender. Make sure to do it step-by-step by breaking it into smaller chunks. Parameters: - code: The Python code to execute

Arguments

```json
{
  "code": "import bpy\nimport math\nfrom mathutils import Vector\n\n# Create cat body\nbpy.ops.mesh.primitive_uv_sphere_add(radius=1, location=(0, 0, 1))\nbody = bpy.context.active_object\nbody.name = 'CatBody'\nbody.scale = (1.2, 1.5, 1)\n\n# Create cat head\nbpy.ops.mesh.primitive_uv_sphere_add(radius=0.8, location=(0, 2.2, 1.2))\nhead = bpy.context.active_object\nhead.name = 'CatHead'\n\n# Create material for the cat\ncat_material = bpy.data.materials.new(name='CatFur')\ncat_material.diffuse_color = (0.8, 0.7, 0.5, 1.0)  # Light brown/beige color\n\n# Apply material to body and head\nbody.data.materials.append(cat_material)\nhead.data.materials.append(cat_material)\n\nprint('Created cat body and head')"
}
```

Response

Code executed successfully: Created cat body and head

最後に出力ログと成果物を確認したところ、細部まで丁寧に作り込まれており、猫の毛皮の色やヒゲなども細かく表現されています。ただし、口の位置 (赤い丸枠) にズレが見られるため、さらなる微調整が必要かもしれません。

Cline 画面を引用
(画像をクリックすると拡大します)

Blender 画面を引用
(画像をクリックすると拡大します)

6-2. 画像を入力プロンプトとして 3D モデルを生成する

今回は複数枚の城の写真から 3D モデルを生成してみます。下記の例のプロンプトと事前に用意した画像を Cline のチャット画面に入力します。

Blender MCP に接続し、新規の状態から開始してください。お城を Blender 内で再現してください。

Cline 上の Claude 3.7 Sonnet のシンキングプロセスのログを解析してみると、提供された複数の画像から姫路城のスタイルであることを認識し、段階的なアプローチを計画していることがわかります。

Cline 画面を引用
(画像をクリックすると拡大します)

最後に出力ログと成果物を確認したところ、姫路城の主要な建築要素である、多層構造の白壁、特徴的な反り屋根、石垣の土台、全体的なプロポーションとレイアウトが忠実に再現されています。ただし、一部のオブジェクト (赤い丸枠) が空中に浮いているような状態が見られ、その点については改善の余地があります。

Blender 画面を引用


7. まとめ

Cline with Amazon Bedrock と Blender MCP を組み合わせた 3D モデル生成の実験により、AI による 3D モデリングの可能性が示されました。特筆すべきは、Cline with Amazon Bedrock の高度な画像認識能力と自然言語理解により、複数の参照画像からものの特徴を正確に分析し、段階的なモデリング計画を立案できた点です。また、複雑な 3D モデリング作業の自動化、基本的な形状から細部のディテールまでの作成、マテリアルやテクスチャの適切な適用など、従来の手作業では時間がかかる工程を効率的に実行できました。

現時点でも、この技術は幅広い分野で活用の可能性を秘めています。例えば、ゲームのコンセプトアートの迅速な 3D 化により、アイデアの視覚化が容易になり、初期プロトタイプ作成では開発チーム内のコミュニケーションが円滑になります。さらに、環境やキャラクターの基本モデル生成を効率化することで、開発サイクルを短縮できる可能性があります。

一方で、一部オブジェクトの位置ズレや細部の正確な配置など、いくつかの技術的課題も確認されましたが、これらは基盤モデルの継続的な機能強化や Amazon Bedrock と Cline の進化により、今後解決されていくことが期待されます。


builders.flash メールメンバーへ登録することで
AWS のベストプラクティスを毎月無料でお試しいただけます

筆者プロフィール

Sheng Hsia Leng
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
ソリューションアーキテクト

ゲーム業界に特化したソリューションアーキテクトとしてお客様を支援しております。
最近、台湾の猫駅長みかんという茶トラ猫にハマっています🐈

AWS を無料でお試しいただけます

AWS 無料利用枠の詳細はこちら ≫
5 ステップでアカウント作成できます
無料サインアップ ≫
ご不明な点がおありですか?
日本担当チームへ相談する